同じ水でも、体が求める水は一人ひとり違う
私たちは日々、当たり前のように水を飲んでいます。
コンビニで買うペットボトルの水、家の蛇口から出る水道水。どれも透明で、無色無臭。あまり深く考えずに口にする人も多いのではないでしょうか。
けれど、私にとって「水」は、単なる飲み物ではありませんでした。
子供の頃、私はごく普通の水を飲みたがらなかったそうです。
親は苦労して試行錯誤を重ね、「純水」というミネラルや成分をほとんど含まない水にたどり着きました。
そのときの私は、それまでとは比べものにならないほどの勢いでゴクゴクと飲み、私のアレルギー体質だった体も落ち着いていったといいます。
この時の私は、きっと“体に合う水”を本能的に知っていたのかもしれません。
この話を聞いたとき、私ははじめて、必要としている水はみんな同じではない、人それぞれ、求めている水は違うのだと気づきました。
それぞれの「天然水」の役割
“みずのみず”で活動をするようになってから、その感覚はますます強くなりました。
一口に「天然水」と言っても、その性質には大きな幅があります。
たとえば、ナチュラルウォーター※1と呼ばれる水は、ミネラル分が少なく、味がやわらかいのが特徴です。煮物や出汁のように、繊細な風味を丁寧に生かしたい料理に向いており、素材の味を邪魔しません。また、調乳にも使われることが多く、赤ちゃんや高齢者にも安心して勧められる水です。
一方、ナチュラルミネラルウォーター※2は、地下を長く通る過程で自然のミネラル分をしっかり取り込んでおり、味にコクや厚みを感じることができます。スポーツ後のミネラル補給や、香辛料や油を使った料理との相性も良く、体を動かす人や健康意識の高い人にとって実用性の高い水です。
こうしてみると、「天然水」という言葉の裏にも、飲む人の体質や目的に合わせた適材適所があることがわかります。
※1ナチュラルウォーター
特定の水源から採水された地下水を原水とし、沈殿、ろ過、加熱殺菌以外の物理的・化学的処理を行わない水です。ミネラル分はナチュラルミネラルウォーターよりも少ない傾向があります。
※2ナチュラルミネラルウォーター
ナチュラルウォーターの中でも、地下でミネラルが溶け込んだ水を指します。ナチュラルウォーターと同様に、沈殿、ろ過、加熱殺菌以外の処理は行いません。ミネラル分が豊富で、地層を通る過程でミネラルが溶け込んだ水です。
“水”の選択
市販されている「ミネラルウォーター」と表示された水の中には、複数の水源をブレンドしたり、ミネラル成分を調整したりしているものもあります。こうした水は、安定した成分バランスが特徴で、整腸作用や栄養補給の目的で選ばれることがあります。
ただし、硬度が高くなると苦味や重さを感じやすく、胃腸が敏感な人には負担となることもあります。私のように、体質的に水の成分に影響を受けやすい人にとっては、こうした違いが体調に直結する場合もあります。
そしてもう一つ、私の原点でもある「純水」は、H₂O以外の成分をほとんど含まない“まっさらな水”です。味もにおいもほとんどなく、コーヒーやお茶など素材本来の風味をしっかり引き出したいときにはぴったりです。赤ちゃんのミルク作りや薬の服用、アレルギー体質の人が安全に水を飲むときにも、純水が最適だと思います。
私にとっては、この純水こそが「水が命を支えてくれる」という実感を与えてくれた水でした。
すべての人に純水が必要なわけではありません。でも、誰にでも“その人に合う水”は、きっとあると思います。
水は、「体が求めているもの」を映す存在
水を選ぶとき、「なんとなく飲みやすいから」「とくにクセがないから」と感覚で選ぶ人が多いかもしれません。けれど、水の種類ごとに性質が異なり、飲む人の体質やライフスタイルに合う・合わないがあることを知っておくだけで、選び方は大きく変わってきます。
料理やお茶のために、できるだけ成分を感じさせない水を使いたいときにはミネラルの少ない軟水が合っていますし、日常的に体を動かす人や汗をよくかく人には、ミネラル分を含んだ中硬水〜硬水が実用的です。そして、成分による負担を避けたい人や、素材そのものの味を丁寧に引き出したい人には純水が向いています。
「どの水が一番良い水か」ではなく、「自分にはどんな水を必要としているのか」
その視点で水を選ぶことができれば、日々の体や暮らしを整える確かな味方になってくれるはずです。
私が赤ん坊の頃に体で選んでいたように、今の自分もまた、体の声を聞きながら水を選んでいきたい。そう感じています。